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釧路家庭裁判所広尾出張所 昭和36年(家イ)2号 審判 1961年5月31日

申立人 小森広(仮名)

相手方 小森雪子(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

当事者間の長女ゆみ子(昭和二十八年二月七日生)次女良子(昭和三十年三月二十九日生)の親権者を父である

申立人と指定する。

理由

申立人は、

主文と同旨の調停を申し立て、その実情として、当事者双方は昭和二十七年五月一日同村の申立外大島三平の世話で事実上の夫婦関係を持ち、同年十一月二十四日法定の婚姻届を提出し夫婦となつた。爾来申立人は自動車の運転手として有限会社○○運輸に勤め、毎日自宅から通勤し、月俸一万五千円を得て相手方および子女との生活を立てて来た。ところが、昭和三十二年ごろから相手方は同町内の本橋某と称する男と親しくなり、申立人が勤務のため留守をすると、相手方は本橋を申立人宅に招いて二人して飲酒にふけるようになつた。申立人はこの事実を相手方や本橋に難詰したところ、両者は右事実を否定しなかつた。のみならず右両名は同町内の○○食堂に入りびたりとなり、夜半の二時、三時ごろまで飲酒した上、相手方はひどく酩酊して帰宅することがしばしばという有様であつた。申立人は相手方のこのような態度に対してしばしば忠告訓誡をしたのであるが、相手方はかえつて反抗的な態度をもつて応じ、はては家を出ると称してはばからず、かつ現実に家を飛び出すことが数度に及び、遂には昭和三十五年十二月三十日申立人の留守中に、二人の幼児を残して相手方肩書住所の近藤宅に出奔してしまつたのである。申立人は酒も煙草も嗜まず、専ら家庭の幸福を念つて働いて来たのであるが、このような相手方の家庭を顧みない不埒な行動に対しては、耐え難い恥辱を憶え、離婚を決意するにやむなきに至つたのである。もちろん幼少の子供二人も相手方には到底まかせることができないので、離婚するにあたつては申立人を親権者として指定することを求める、というにある。

当裁判所の調停委員会は、事案の審理のため調停期日を指定し当事者双方を呼出したところ、昭和三十六年四月十五日および同年五月六日の各期日に、申立人は出頭したが、相手方は特段の事情もないのに出頭せず調停に応じなかつた。そこで相手方現住所において現地調停をすることとし、同年五月十九日相手方住所に赴き当事者双方を審尋して、事情を聴取し双方に譲歩を求め、種々調停を行つた。

ところで、当事者双方の陳述を綜合すると、当事者双方が婚姻して生活を共にし二児を生み、その後別居するに到つたいきさつは、ほぼ申立人の申立の理由どおりであることが認められる。

以上の事実つまり相手方と申立外本橋某との間に肉体関係があつたかどうかは明らかでないとしても、相手方が夫以外の男性と夫の留守に自宅で飲酒したこと、または飲食店にしばしば深更まで夫以外の男性と飲酒し酩酊し午前二時三時ごろ帰宅したこと、このことを訓誡する申立人に対してなんら詑ることなくかえつて挑戦的な態度をとつていたこと、今回の別居をする前にも相手方は家出をしていること、なおその上年の暮に幼児二名の養育や家事を放棄して理由もなく帯広市に出奔したこと、等を勘案すると、夫たる申立人は以上の事実により相手方から婚姻を継続し難い重大な恥辱を蒙つたものと認めざるを得ない。そうだとすれば申立人にとつては離婚を求める理由が存するといわねばならない。また申立人はこのような行動をとつた相手方を宥怒する意思は全然有していない。これに対して相手方は右の各事実を肯定しながらも、離婚を承認しないのであるが、その理由とするところは幼児二名が可哀そうであるというのみであつて、夫たる申立人と種々の困難を乗り超えて夫婦生活を継続してゆく熱意も愛情も、すでに失つていることが認められるのである。

相手方は幼児二名が可哀そうであるから母親としての義務を尽したいというのであるが、この幼児二名を年の暮に放置して気ままに家出し、今日にいたるまで幼児二名に対する愛情をなんら実踐において示さなかつた相手方の態度に鑑み、かかる理由が真意に基くものとは到底考えられない。右事情も当事者双方の婚姻を継続してゆく絆になりえないとすれば、前敍した諸般の事情から、当事者間における夫婦関係の破綻は縫合のできない状態にまで発展しており、その他一切の事情を考慮しても申立人と相手方とを離婚させる外、夫婦関係を調整する最善の方法を見い出すことができない現状であると認めざるを得ないのである。

そこで調停委員大和田貞雄および同山崎シズの意見を聴き、本件に現われた一切の事情を斟酌し、申立人と相手方とを離婚させ、長女ゆみ子次長良子の親権者を申立人と定めることを相当と認め、家事審判法二十四条に従つて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 石丸俊彦)

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